<Vol.78 2012.2月号>

認知症予防は歯と歯ぐきの健康から

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歯を失わないようにケアすることは、からだを病気から守ることにつながります。

お年寄りのトボケは要注意!?

 認知症はテレビをはじめ多くのメディアで取り上げられ、がんとともに関心の高い病気の一つになっています。レーガン元米国大統領やサッチャー元英国首相も認知症を罹ったように、だれもが発症しうる病気であるという事実を、みなさまよくご存じのことでしょう。
 テレビコマーシャルや病院のポスターなどで“単なる物忘れと、認知症は違います”というフレーズを聞いたり、見た方も少なくないでしょう。のどまで出掛かっていることを思い出せず、会話のなかで“あれ”とか“それ”とか代名詞を頻繁に使っている経験はありませんか。これは加齢に伴いみられる生理的な変化で物忘れと言われています。
 では認知症はというと、古い記憶は比較的残ったまま、直近のことを忘れてしまう、もしくは忘れやすくなる状態が特徴としてみられる脳の病気です。昔の出来事は記憶しているために、発症したばかりの頃は一見トボケているようにみえますが、本当は認知症だったということもあります。
 しかし、病気が進行すると自分の身の回りの状況を正しく認知・判断できず、一人で生活することが難しくなり、介護が必要となってきます。
 現在、認知症を100%予防する手段はありませんが、ライフスタイルと認知症発症の関連性を調査した研究などから予防策が考えられています。

口の健康を維持して予防する

 日本人が発症しやすい認知症には、大きく分けてアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の2種類があります。
 アルツハイマー型認知症は、脳が小さく萎縮(いしゅく)するタイプの認知症です。アルツハイマー型認知症の発症と自分の残っている歯の本数との関連性は強く、歯を温存することが予防につながると言われています。噛んで脳へ刺激が伝わると、学習能力にかかわるアセチルコリンという脳内の神経伝達物質が増えて、脳が活性化します。そして、このアセチルコリンの量が減ると認知症が引き起こされると考えられています。
 つまり、アルツハイマー型認知症の予防には、歯を失う原因となる虫歯や歯周病を予防・治療することが大切になると考えられています。
 中高年の5人中4人が歯周病にかかっていると言われています。しかし、虫歯とは違い、痛みなどの自覚症状がないため日頃から注意が必要です。虫歯や歯周病を防ぐには、毎食後に歯をきちんと磨くことはもちろんですが、歯の健康をサポートしてくれるかかりつけの歯科医を決めて、1年に2回程定期的に歯と歯ぐきのチェックを受けることも重要です。また、歯の数が少ない場合でも、入れ歯を装着するなど、よく噛むことができるよう適切に対処することが、アルツハイマー型認知症の予防につながると考えられています。

ライフスタイルを見直して予防する

 一方、脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳の血管の病気によって引き起こされる認知症です。
 つまり、脳の血管が詰まったり、破れたりしないように予防することが、脳血管性認知症を防ぐことになります。
 では、どのように予防することができるのでしょうか。脳の血管の病気を防ぐ最重要ポイントは高血圧の予防です。高血圧の予防には、食塩の摂取量を控えること、野菜や果物に含まれるカリウムを多く摂取することなどがすすめられています。
 このような食生活の工夫とともに過度の飲酒を控えたり、禁煙、運動不足の解消など、生活習慣を改善することも適切な血圧管理を行う上でとても重要です。さらに、脳の血管の病気の予防には体重・血糖・コレステロールの管理によって、肥満、糖尿病、脂質異常症にならないようにすることも大切です。
 また、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などの生活習慣病が、アルツハイマー型認知症の原因となることを示す研究がいくつか報告され、注目されています。いずれの種類の認知症予防でも生活習慣病の予防・治療は欠かせません。そして、生活習慣病予防には歯周病予防が欠かせません。食後の歯磨きと歯科医の定期健診をしっかりしましょう。

“よく噛んで食べる”ことが予防につながる!?

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 歯と歯ぐきの健康を維持して、よくものを噛んで食べることは認知症を予防する上で2つの効果が期待できます。
 まず一つ目は、満腹感を感じて食べ過ぎることがないため、肥満を予防したり、解消することができます。二つ目は、よく噛んで唾液をたくさん出すことで、口の中をきれいにする効果があります。
 肥満は高血圧、糖尿病、脂質異常症を発症させるリスクの一つです。これらの病気を放置すれば、動脈硬化が進行し、最終的には脳血管性認知症の原因となりうる脳の血管の病気を引き起こしやすくなります。認知症予防のためにも肥満の予防・解消を心掛けることが大切です。
 また、唾液には虫歯や歯周病の原因菌を洗い流す作用、細菌の増殖を抑える作用などがあります。よく噛んで唾液をたくさん出すことは歯周病や虫歯の予防につながり、アルツハイマー型認知症の予防が期待できます。
 しかし、ダラダラと間食をしていると、唾液の作用が発揮されないことがあるので要注意です。
 今すぐ取り組むことができる認知症予防の一つとして、今日から歯と歯ぐきの健康チェックを実践してみてはいかがでしょうか。

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※参考文献:長谷川雅哉:老年精神医学雑誌,16(4):432-438,2005 
      財団法人8020推進財団:からだの健康は歯と歯ぐき健康から,2007
      Kivipelto M et al:Arch Neurol,62(10):1556-1560,2005
      近藤克則,山本龍生ほか:平成22年 厚生労働科学研究
      厚生労働省:生活習慣病を知ろう